キューブ

突如理由もわからず謎の正方形の部屋"CUBE"に監禁された一行は脱出を図る。その密室には危険な罠が張り巡らされており、登場人物たちは次々と命を落としていく。
密室劇ということもあり舞台は単調。だが少ない登場人物の中身を丁寧に描いており、人間ドラマが面白く片時も目を離せなかった。危機に面したキャラクターたちの本質の描き方は素晴らしい。ある者は勇気を、またある者は醜態を晒す。その人が持つ肩書きや社会的地位は、極限の状況ではこれっぽっちも役に立たない。根っからの人間性が自分と仲間を救い、そして殺すことになる。ある人物の底にある狂気がむき出しになった瞬間には、恐怖で鳥肌がたった。
そんな中、一見冴えない人物が大活躍するのは痛快だった。
ストーリーの面白さに加えて90分という短さも集中して鑑賞できた一因だろう。

CUBE内の目が冴えるような色味は刺激的で、その中で起こる惨劇は目を覆いたくなるほど残酷だ。まるでアイスピックで精神をえぐるかのような凄惨な描写が続くが、無機質でスタイリッシュな室内で飛び散る真っ赤な鮮血はどこか美しく見える。モノクロのエンドロールすら見入ってしまった。観客をただ怖がらせるだけの一般的なパニックホラー映画ではない。無駄を削ぎ落とした脚本と洗練された舞台セット、人間の本質を問う内容は観ているこちらまで深く考えさせられる、高尚で芸術的な作品だ。

登場人物も空間も限られているし、予算も決して多くはなかったはず。それでもここまで面白い作品が作れることに感動する。