ジェイソンX

ジェイソン、宇宙に進出。

8作目で最凶の殺人鬼は地元のクリスタルレイクから足を伸ばしてNYに上陸したが、その程度では飽き足らなかったようだ。彼のスケールは地球という小さな惑星では収まりきらなかった。

軍により危険視されたジェイソンは冷凍保存で封印される。だが、400年後事情を知らない未来の軍の科学者たちは彼を解凍してしまう。再び暴れ出すジェイソン。またも凄惨な殺戮が始まるかと思いきや、彼は未来の軍事力に一度屈してしまう。痛めつけられた彼だが、持ち前の強運とタフネスでメカ・ジェイソンとして復活する。そのビジュアルがアメコミのヴィランようで非常にカッコいい。
激しい怒りを表すかのような赤い瞳にシルバーのボディ、ロボコップのようなゴテゴテしたスタイルに思わず一目惚れしてしまった。メタルで覆われた肉体は銃弾を通さず、強烈な打撃も一切通用しない。過去作で意外に打たれ弱い一面を見せたこともある彼だが、非の打ち所がない完全無欠なモンスターになった。体がサイボーグ化するにとどまらず、何故かホッケーマスクまでメカ化したのには笑いを禁じ得ない。

進化したジェイソンはもちろん魅力たっぷりだが、彼に対抗する人間たちも素敵だ。彼らの戦闘シーンは熱く、本作の大きな見所だ。
軍隊長との一騎打ちは終始ジェイソンが優勢だったが、隊長の気合いに思わず最強の殺人鬼も押される場面があった。自分の職業に誇りを持った仲間思いのカリスマ性のある隊長は、今作で最高のキャラクターの一人だ。また、軍の女アンドロイドとのバトルはエキサイティング。一度は彼女に辛酸を舐めされられたジェイソンだが、サイボーグ化した彼は再び挑む。そして気合を込めてリベンジを果たす姿は感涙する。

宇宙船の中でモンスターに対抗するシチュエーションは「エイリアン」を彷彿とさせるが、今作は「エイリアン」に見られたような張りつめる恐怖や重厚感は残念ながら全くない。だがその分コミカルで、バトルシーンが盛り上がるものになっていて「エイリアン2」のようにエンターテインメント度は非常に高い。「ジェイソンX」は映画としての質はかなり低く典型的なB級映画と言っていい。しかし「エイリアン」と「エイリアン2」の要素を足して二で割ったような、良いところ取りの一本となっている。

今作は、13日の金曜日シリーズで恒例の殺人シーンもなかなか手が込んでいる。ジェイソンが封印から解かれた後の一発目の殺法、液体窒素に顔を埋めての顔面破壊は見応えがあった。それとVR世界でのお色気レディ二人殺しも見どころの一つ。
400年ぶりの殺人に待ち焦がれていたご様子で、暴れまわってくれた。

時代が移り変わっても山河は変わらず美しくあるように、彼もまた変わらぬ彼でいてくれた。