ロボコップ

近年のアメコミヒーローたちは、スタイリッシュでヒロイックなカラーのカッコいいスーツに身を包んで"不殺主義"を掲げたり“女性は絶対に傷つけない"といった、お子様の見本になるような優等生が多い。が、87年に製作されたロボコップはそれらの主張を捻じ曲げるが如く、悪党どもを容赦なくぶっ殺す。しかも自分を痛めつけた連中には特に厳しい制裁を与えるという、ヒーローにとってはあるまじきアンフェアな一面を持つ。その描写はやけに痛々しく、たまらなく痛快だ。
治安を守るためとはいえ暴力があまりにも過ぎており、本当に彼は正義のヒーローなのだろうか?という疑問符がつく。もしも現実にこんな警官がいたら、悪党だけでなく善良な市民も恐くてたまらない。その存在を世論が許すはずはないだろう。しかし映画というフィクションの中では、ロボコップはこちらの要望に全て応えてくれる最高に頼もしい警官であり、最高のエンターテイナーだ。
彼のいかにもロボットらしいカクカクした動きと、"ウィーンウィーン"という機械音は哀愁を、そして笑いを誘う。敵の卑怯な罠にかかり動きが制限されたシーンでは応援しつつも、その動きが滑稽で思わず吹き出してしまう。敵の銃撃によって故障した頭部を自分自身で真顔で修理するシーンに至ってはシュールすぎて爆笑した。
不謹慎であればあるほど笑いを誘発される。こんな映画は他にない。ロボコップには申し訳ないが、心の中で「もっと酷い目にあってくれ!」と願っている自分がいた。

ストーリーテリングと演出が抜群に面白いのに加えて、ロボコップというキャラクターが本当に魅力的。
ロボコップ」という、いかにもな名前のダサさ。スタイリッシュとは程遠い、レトロでずんぐりしたデザイン。動く時の機械音と鈍さ。今日では間違いなくウケないであろう、これら全ての要素が愛らしい。
ひと昔前の映画だからこそある良さを、この映画では全て出していた。

近年はデッドプールがアメコミヒーローとしては不謹慎なネタやバイオレンスな描写で異彩を放ち注目を浴びているが、それら全てにおいて30年前に誕生したロボコップが上を行っていると断言できる。デッドプールは最初からブラックな笑いを狙いに行っているが、ロボコップはまったくの自然体。養殖と天然の差は、二本を観れば必ず理解できるはず。

やはり天然モノは、一味違うぞ。